オスプレイ機上から

比嘉俊次

2013年03月24日 21:20


オスプレイのデモフライトの案内があったので行って乗ってきました

オスプレイというと政治的な話になりがちですが、嘉手納の屋良育ち、宜野湾に住んで10年以上の者として、どうしても嘉手納or普天間基地を発着する機に乗ってみたいとずーっと思っていた。「アッチからはコッチはどう見えるんだろう?」と

ということで、基地の街に育っていない他の記者とは違う、率直な感想を-いうまでも無く、このブログは私個人のブログで、感想も私の個人的な感想です-

ちなみに私は取材用の中型ヘリやセスナ、軍用機ではP-3、CH-47などに乗ったことがあり、06年にはアメリカ海軍の開発基地を訪ねオスプレイを見学する機会がありました

今回搭乗したのは普天間基地配備の04号機。救命胴衣一式とヘルメット一式着用で、4点式シートベルトで完全固定。飛行中の立ち歩き不可

まず・・・
確かにアメリカ軍が自慢するだけはある。STOLモードで離陸だったが、記者と乗員で20人ほどとは言え、ほとんど滑走せずに、あの大きな機体を軽々と持ち上げた。強大なエンジントルク。タンデム機のようなローター間で加重のバランスをとるような動作も無い(乗員は進行方向に対して横向きなので、左右間でバランスをとる方が感じにくいだけかもしれない)
固定翼モードでの飛行特性も驚き。ヨーの出方は小型機のような軽快さ。加速もスムーズ。低空飛行訓練は当然必要になるだろう。ただ高翼機のため、荷室は振り子状態で、弱い人は酔いそう(そのためか、各座席の後ろににフレッシュエアのダクトがある)だし、着用を命じられる救命胴衣にはバトンサイズのアクアラングまで内蔵されている

固定翼→ヘリへのモードチェンジの際には、まずエンジン音が変わり(プロペラのピッチの変化?)、の後10秒内にローターの角度が変わりだす。この時(外が見えないため正確な前後関係は不明)、車でいうと強めのブレーキをかけたような減速感があり、外を見なくても体感できる。転換は1分以内と説明していたが、映像を見ると1分強かかっている。エンジン音などを聞いていると、おそらく一連の動作は完全なコンピュータ制御か。また、この時操作方法も飛行機からヘリへと変わる。つまり操縦桿やスロットルレバーの使い方が全く異なるが、インタビューをしたパイロット(以前は47の操縦士)は「我々は訓練を積んでいるから大丈夫」とのこと

その他、
騒音は固定翼モードではCH47と比べるところが無い。つまり機内で50㎝以上離れると会話など出来ないが、あの独特の低周波音は不思議と感じられない。ヘリモードになると高周波のノイズが入りだす(音はますますヘリっぽい音-ガスタービンっぽい-になる。またエンジン音の変化ではないと思うが、エンジンの向きが変わる前に音が変わる)が、やはりあの低周波音は感じられない
左右のエンジンをつなぐドライブシャフトは機内からは見えない。また窓は左右に直径50センチほどの円形の窓が2つずつしかない。ただし、47と同じように荷室の右舷前方に扉があるほか、後部にはハッチがある(ただしこちらは全閉できる)。乗員も47と同じくパイロット2名とその後部に一人(ただし、機上整備員と違い操作機器には一切触れない)、と後部ハッチに1名
赤いウイングマークの個体は「隊長機」などと呼ばれる事があるが、実際には機の割り当ては無いとのこと。実戦を考えれば当然か
意外に感じたのは機体・機内が自衛隊機並みにキレイなこと。この個体は実戦投入はまだ無いのか、オイルのにじみやよごれ、しみなどは無かった
また全体に機内の雰囲気は06年にパタクセントリバーで見たときの記憶(メモOKで写真不可だった)と違う。機内のむき出しの配線は特に記憶に残っていないし、特にコクピットには06年に着座し操縦桿もにぎらせてもさせてもらったが(今回は撮影のみ)、こんなにデジタル化(液晶画面ばかり)だったか?逆にレバー類ももう少しシンプルだったような気が・・・あれから仕様変更があったのか、バージョンが違うだけなのかは不明

所定のコース(中城~金武の本島東海岸→Runway240)を2周(約30分)しただけで、もちろん安全性など分からない。06年に墜落原因についてメーカーに聞いたときにいろいろと「想定外」があったが修正済みと説明したが、アメリカ軍は寒冷地から砂漠、海上まで実戦展開するので、今後、普天間のオスプレイたちにも想定外のストレスがかかってくるはず。欠陥機などというつもりは無いが、やはり2ローター・2エンジンという基本的な構造からくる不安定さがどうなるかが一番の課題となるはずだ。アメリカ軍機の予防着陸の頻度を考えると、とにかく宅地上空でのヘリモードは避けて欲しい

そして、個人的には試乗の一番のハイライト・自分のアパートの上空通過はどうだったかというと・・・・「機内から見ると遥か下界の事」という感じ。この日は記者を乗せているということで、ちゃんと着陸時でもアプローチを高め(おそらく地表から200mほど。きのうは150以下でヘリモードでのアプローチががあった。同じヘリモードでも結構バラつきがある)にとっていたこともあるが、後部ハッチから切り取ったように見える地上は真下は見えないので遠いし、下からからだと「ん、この音は・・・やっぱりオスプレイ・・・早く行け・・・早く行け・・・テレビが聞こえなくなってイライラ・・・通過・・・やっぱり、この低周波は不快・・・早く行け・・・行った」となるが、機内からだとヘリモードでのアプローチでも80km/h程度は出ていると思うので、機上からは「通過は一瞬」なんだと実感
(追加訂正:那覇からのヘリモードでのアプローチを実測したところ、時速は180㎞。意外と速い。大きいから速度感がつかめていないのか。新都心上空で固定翼→ヘリに転換した場合でもほぼ同じ。ただし、これは後続機のため、ヘリモード転換後に減速したのかもしれない)

しかし・・・基地の街の住民としては「ヘリモードか固定翼モードかは、その時々の状況によって安全なほうを選ぶ」という説明には納得できない。翼の浮力を利用するSTOLモードのほうがより安全だとメーカーの担当者も言っていたし、風上から滑走路へのアプローチは実戦はともかく、管制上の必要からもないはずだ(昨日もギャラクシーに続いてヘリモードで5機が着陸)。固定翼とヘリの共存は難しいといいつつ、那覇空港の上空をヘリモードで通過したり。そして、山間地が無い沖縄で出来ない低空飛行訓練を本土でやるのに「沖縄の負担軽減」と言ってみたりと・・・

以前のアメリカ軍の広報はもっと率直だったはずだ。「これは必要な訓練。理解を求めたい」と。・・・しかし、数年前にアメリカの利益代表が「普天間基地は人が住んでいないところを接収して建設された」「周辺の小学校の移転計画があった」と言ってみた話が、意外と平気で引用されるのを見て、彼らは「日本人は調べはしない」、とタカをくくっているとしか思えない。しかし、沖縄からすればすぐに答えに詰まる誠意の無い話によって、「地元の穏健な保守派」が離れてゆき、今の状況を作り出していることを今もって理解していないようだ。自分達の組みし易い人たちを頼みとする一本綱の広報戦略なんて綱渡りだと思うし、理解を求めるべき対象がどこにいるのかがまず見えていないのではないか
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